Crown Pawn

歩兵の上の冠

小説の面白さを知ってほしい! 鳩をも撃退したくなる作家 佐藤正午さんのオススメの小説

鳩の撃退法という本を知っていますか?

山田風太郎賞を受賞したこの作品は、デリヘルドライバーかつ直木賞作家が主人公として活躍するミステリーです。

害鳥の駆除方法だと思いましたか?実は、直木賞受賞作家の本格ミステリー小説なんです。

今回はそんな本を書いた作家、佐藤正午さん彼のおすすめの本を紹介します。

佐藤正午さん

佐藤正午先生は大学中退後、佐世保にて小説の執筆をし、「永遠の1/2」ですばる文学賞を受賞してデビューしました。

趣味は競輪で、彼の著作にも多数、競輪をする描写があります。

また「身の上話」という物語は2013年にドラマ化された経歴もあります。

前述の直木賞受賞という経歴もあり、かなり実力派の作家であると言えます。

 

佐藤正午の魅力

この作家の魅力は、リアリティに富む人物や町の描写と、独特なストーリーの描き方にあります。

「ありのすさび」というエッセイ集に彼が街の調査を行う一節があります。

ロケハンのために上京する余裕のない彼は、詳細な区分図を買い、各登場人物の通勤路から偶然で会うデパートまで全て確認しました。

その甲斐あってか、「鳩の撃退法」に出てくる中野の描写は本当に素晴らしいものでした。

中野ブロードウェイやその脇の飲み屋街、ミスタードーナツが作中に登場します。

当時近辺に住んでいた私は、本当にここで起こった実話なのではないかと錯覚するほどでした。

 

登場人物も個性的な人間が多いです。

デリヘルドライバーや宝くじで2億円当てた女性、自分とそっくりな人間がいる主人公などどの人物も本当に興味深くなっています。

内面の描写に共感できる部分が多いのも、彼の物語に深みを与えるのに一役買っているでしょう。

 

独特な、小説の語り

小説の語りもこの作家の魅力の1つです。

ストーリーの進行が、一人称と三人称の視点を巧みに切り替えながら、時系列さえずらしながら進んでいく。

二つ以上の別人物がおりなすストーリーが絡み合い、一つの大きな物語が完成するようになっています。

伏線を回収しながら物語が進行していく様は圧巻です。

 

このように物語も良いが、この著者のエッセイもなかなか面白いです。

物語の書き方や作家としての生活、彼の女遊びなどを赤裸々に綴っている。

彼によれば、小説を書き続けるためにいちばん必要なものは女友達だそうだ。

登場人物の深みは彼の私生活によるものではないかと思えるほどです。

作家ではない私にとって、小説家である彼との日常の見方の違いがとても面白かったです。

エッセイを読む一番の醍醐味とも言えるものを、彼の本は与えてくれるでしょう。

 

 

おすすめの本

ネタばれを避けるために、非常に短いレビューになっています。

彼の作品には終盤の展開にキーがあることが多く、あらすじを語るとネタバレになってしまう可能性があります。

なので気になったらぜひ、Amazonでチェックしてみてください。

鳩の撃退法

夢枕獏さん、京極夏彦さん、奥泉光さん、筒井康隆さんら選考委員から圧倒的な評価を受けた、第6回山田風太郎賞受賞作! Amazon紹介文より

彼の物語のなかではいちばんお気に入りの作品です。

二千万という大金を手に入れた作家である主人公、喜びもつかぬ間、彼が使った一万円札は偽札だったことが判明する…

人物や街の描写が丁寧で、本当に現実の出来事なのではと思わせられるほどだ。

上下巻と長いがおすすめである。小説の醍醐味を楽しめるでしょう。

 

身の上話

あなたに知っておいてほしいのは、人間にとって秘密を守るのはむずかしいということです。たとえひとりでも、あなたがだれかに当せんしたことを話したのなら、そこから少しずつうわさが広まっていくのは避けられないと考えたほうがよいでしょう。不倫相手と逃避行の後、宝くじが高額当選、巻き込まれ、流され続ける女が出合う災厄と恐怖とは。 Amazon紹介文より

入門編として程よい長さの作品になっています。

語り手の立ち位置に注目しながら読んでほしい作品です。

 

 永遠の1/2 

もしも自分が二人いたらどうなるのだろう。

競輪で当たってツキが回ってきたと思ったら、不可解な事件に巻き込まれていく。

ミステリーかつ青春小説という面白い構造になっています。

これも入門編としておすすめなので、初めに手にとる作品としてどうでしょうか。

 

 

月の満ち欠け 

直木賞受賞作。これで佐藤正午の名前を聞いた人も多いのではないでしょうか。

生まれ変わりという風変わりな題材のこの作品は序盤の描写を注意して読んでみてほしい。

やがて気付きがあるでしょう。

 

ありのすさび 

上にも書いたエッセイ集。

物語を読む前にエッセイから始めるのも一つの手でしょう。

読後に物語を読むと気付けることも多いです。

正直、彼の私生活が本当に面白そうに感じました。

小説家としていかにネタを探すか、特有の感性など学びになることも多いです。

彼の考え方、出来事のとらえ方などを知ることができ、エッセイの醍醐味を堪能できる作品になっています。

 最後に

いかがだったでしょうか。

普段あまり小説を読まない方にもおすすめできる上に、本格的なミステリーを楽しむことが出来る作家です。

ぜひ、読んでみてはいかがでしょうか。

 

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